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法人名義の車などの資産を社長がプライベート利用していた場合、 税務調査でその車に係る減価償却費を否認され、 認定賞与となって源泉所得税を課税されるというケースのご相談ですね。
この車が高級外車やクルーザーや航空機の場合が多いのですが、「普通の車」で 否認指摘を受けたというケースもあります。
まず、ここで前提として理解をしておかなければならないのは、所得税法と法人税法では、プライベート利用があった場合の取り扱いが異なるという事です。
所得税に規定されている必要経費の概念は、37条あり、45条でその中で家事費および家事関連費は必要経費にならないと規定されています。
所得税における事業所得の計算で必要経費に算入できるのは、車両等の資産の減価償却費のうち、『家事費部分を除いた割合』だけとなります。
※70%が業務の用に供していて、30%が個人的利用なのであれば、70%部分が減価
償却費として必要経費
法人税法第31条では、法人が所有する資産は下記の様な取り扱いになり、所得税とは異なるのです。
・減価償却費として損金経理
・その分だけ損金になる
※大袈裟に言えば、法人が有する資産であれば、法人の減価償却費になり、一部のみ損金にならないということはありません。
それでは、会社名義であれば、プライベート利用しても問題ないのかというと違います。
調査での指摘事項で減価償却費否認及び源泉所得税徴収漏れの指摘であれば、上記法人税法31条の解釈で抗弁できますが、この場合、課税庁は『行為計算の否認』で指摘をしてくるかと思います。
上記より、所得税では事業割有に応じて必要経費に算入、法人税では、100%経費か、100%経費否認かの何れかになる事になり
判例(平成7年10月12日、非公開裁決)では、「スポーツカーとモーターボートの事業供用」が問題になりました。
※ざっくりいえば儲かっている法人が高級車やクルーザーを保有していて減価償却してい
ましたが、税務調査で否認され、認定賞与として課税された事案です。
採決では高級車は損金として認められ、クルーザーは認められませんでした。
上記より、法人に対する税務調査において、「車両の減価償却費は役員がプライベート利用されていますから30%だけ否認します」
という指摘をしてきた場合は、法人税法第31条を根拠にと反論することが可能なのです。
では、法人は本当に0%か100%かと聞かれると、実は否認する方法は他にもあります。
社用車をプライベート利用した際の『使用料を計上させる』ことです。
法人の使用料としての益金を雑収入の計上漏れを指摘する方法です。
使用料の適正額を見積もるのは難しいと思いますが、その指摘については抗弁のしようがありません。
私の経験上は一部だけ減価償却費を否認指摘されたケースはすべて反論しましたが、身近の友人(税理士)の税務調査で使用料を指摘されたケースがあった様なので、今後同様の指摘が増えていくかと思います。
対策としては、事前に社用車とプライベート車できっちり使い分けるか、一定額・一定頻度等のプライベート利用を規程しておくかで対策は可能かと思います。